Kiso nihongo bunpoo.pdf

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まえがき
近年、 現代日本語に対する関心が高まる なかで、 文法の問題がよ く話題
に取り 上げられる ようになってきました。 大学等で日本語文法を対象と し
た科目やコースを設置するところも増えてきています。 ところが、初学者
向けに日本語文法を組織的に概説した書物は、 意外に少ないようですD 文
法研究が急速な進展を示してい るのとは対照的に、 その成果をわかりやす
く解説する作業は、 今のところ、 十分には進んでいないのが実情のようで
す。 日本語文法の体系をわかりやすく概観した書物 はないか、 との初学者
の要望に少しでも答えたいと思ったのが、 本書を執筆することになったそ
もそもの動機です。
本書は、 現代日本語の文法を概説したも のです。 文法現象をわかりやす
く整理したも のです。 「文法論」の書物ではあり ませんので、 文法現象を支
配する原理、 原則はどのようなものか、といった文法の根本にかかわる事
柄は扱ってい ません。執筆に当たって特に心がけたことは、次の 3 点ですo
第1に、 記述・説明をわかり やすいものにするように努めました。 第2に、
基礎 的な文法事項と考えられる ものは、 できる限り網羅するように配慮し
ました。 第3に、 それらの事項をなるべく組織的・体系的に記述すること
を目指しました。 少し欲張り過ぎたかも しれませんが、 言わば、 「わかりや
すく、網羅的で、 体系的にJ を標語にしたわけです。
本書をまとめるために、 これまでに公刊された数多 くの文献、 学説 のお
世話にな りました。 記述・ 説明の仕方や術語の用い方においてこれらの説
を直接取り入れた点も多数あ り ますが、 概説書と しての性格上、 これらの
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点、 を具体的に明示することは、省かせていただきま した。 こ の点について、
関係の方々 にお詫び、申し上げます。
諸事情を考慮し、 できるだけ早く仕上げることを第1に考えたために、
十分な検討を加える余裕があ りませんでした。将来、機会が与えられれば、
よりよいものにしていきたい 、と考えています。 この ことに関連して、 読
者の方々 に申し上げておきたいことは、 本書は一つの試作品に過ぎない、
目次
という 点です。 記述 ・説明をわかりやすいものにしようとして、 便宜的な
扱いをした箇所も少なくありません。 文法とい うものに対して、とかく絶
対視する傾向があるようですので、 この点を特にお断りしておきたいと思
第I部 文の組み立て…1
6章 ムード…104
7章 疑問と否定の表現…121
8章 提 題と取り立て…130
9章 名 詞の修飾と並列…140
10章 指示…146
11章 省略、 繰り返し、 縮約
います。 あえて言うなら、 読者が本書を批判的に読むことで、 自ら文法を
柔軟に見る目を養ってい く ことこそを、 著者は願っているのです。
第II部 語…7
1章 品詞と語の構造… 9
2 章動詞…13
3章 形容詞…21
4章 判定詞…24
5章 助動詞…28
6章 名詞 …31
7章 指示詞…36
8章 副詞… 38
9章 助詞…45
10章 接続調…50
11章 連体調…52
12章 感動詞…54
13章 接辞… 56
最後に、本書の出版についてお世話下さった岡野ゆみ子さん、 福西敏宏
さんと、索引作成を手伝って下さった中村文子さん、 山中弘子さんに感謝
の意を表したいと思います。
12章 分化文と未分化文 …156
13章 慣用句…158
1989年7月
著者
第IV部 複文…161
1章 補足節…1
2 章 副詞節…168
3章 名詞修飾節…180
4章 並列節…185
5章 従属節の従 属度… 189
第 四部 単文…臼
第V部 その他…193
1章 補足語… 65
2章 注意すべき構文…74
3章 述語の修飾語… 84
4章 ヴォイス…89
5章 テンスとアスペtク ト
1 章敬語 表現の文 195
ことばの男女差…201
索引 …205
11
111
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1節 文と語
1 我々 は言語を用いて相互の意志を伝達するわけであるが、 言語表現の
最も基本的な単位は「文」 であるo r文」 は、 あるまとまった内容を持ち、
形の上で完結した(表記において 「句点」 が与え られる)単位であるo 文
章や談話は、 複数の文の有機的な組合せによって構成される。
2 文は、 より小さな要素の結合により作り上げられる。 文を構成する要
素の中で最も基本的なものが 「語」 であるo r語J は文を作るための最も
重要な材料である。 文の数(文として可能なものの数)が無限であるのに
対して、 その材料である語の数は有限であるo 我々 は、 有限の単語を用
いて、 限りない数の文を作り出せるわけであるD
2節 文の基本構造
1 文の組み立ては、 複雑 かつ多様 なものであるが、 その骨格をなすもの
は、「述語」、 「補足語」、 「修飾語」、 「主題」 である。
2 文末の位置で文を支えるのが、 「述語」 であるo r述語」 は、 文の中心
的な要素であ り、述語の内容によって文の大枠が決定されるo それは、
家屋を支える柱が家屋全体の形を決めるのに似ているロ例えば、「太郎 が
重い荷物を軽々と運んだ。」という文では、 文末の 「運 んだ、」 が述語であ
るが、 「運んだ(運ぶ、)Jという述語は、 特定の事態を表現し、 文の骨格を
定める働きを持つo
3 述語が表現する事態には、大別して、動き(動的事態)と状態(静的事態)
があるD 動きを表す述語を 「動態述語」、 状態を表す述語を 「状態述語」
と呼ぶ。 先の例文の 「運んだ、」 は、 動態述語の例であるo これに対して、
例えば、 「次郎 は仕事で忙しい。」 という文の述語である 「忙しい」 は、
状態述語であるo 動きと状態の違いは、 様々な文法現象に関係するo
4 述語が表す事態には、人やものが様々 な形で関係する。例えば、 「太郎
と\
が重い荷物を軽々と運んだ、。」 という文では、 「運搬J の事態に 「太郎」
と「荷物」 が関係することが表現されているo この文におい ては、 「太郎
がJ と rc重い)荷物をjは、 「運搬J という事態が成り立つために 必要と
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